突然ですが、
脳はどこにあるのか考えたことありますか。
またお前はバカなことを言うと、笑わないでください。
脳はアタマ、頭蓋骨のなかにあるくらい
小学生でも知ってるゾ、と言われそうです。
じゃあ、記憶はどこにありますか。
記憶は脳の中だろうって?
はぁ、やっぱりそうですか。
でもね、最近思うんですよ。
記憶しているはずのものがどこにも見当たらないことが実に多い。
今読んでいる一冊前の本の内容とか、
おととい画廊であった人の名前とか、
ケータイの予備の電池を置いた場所だとか。
つまり、日常のあらゆる場面でそのような事件が多発している訳です。
「事件は現場で起こっているんだ!」
ところが、たまに学校に呼ばれて、
フォトポリマーグラヴュールの細かくも長々とした手順を教えたり、
版画工房でソフトグランドを塗布する時のウォーマーの温度と
エッチングに使用するニードルにはペンシル型のけがきを使うと良いとのアドバイスと
松やに粉末を版面に付着させるためにアルコールランプを外すタイミングと
メゾチントのためのインクの粘度をどのくらいにするとかを、
同時に教えることができるんです。
昨日食べた夕飯のおかずを忘れてしまうような私がです。
慣れない四人の方に同時にです。
あと六人いれば聖徳太子です(笑)。
っで、何が違うのかなって思った訳です。
三日前に読み終えた小説の内容を思い出せない現実と
版画工房でのアタマのさえは、同じニンゲンとは思えません。
考えました。
日が経つと忘れてしまいそうなのでその日のうちに。
わかったんです。
なんてことは無い。
手を使って覚えたことと目で覚えたことの違いです。
ですから、脳は手にあるというのが
わたくしの今日の研究発表でございます。
版画工房
Osamu FUJITA HP