「社長、私はお宅のその技術力にほれこんだんです。
是非ともこの仕事、受けてくれませんか。」
あれやこれやとおだてられながら、
熱心なお誘いに、ワタクシ二晩考えて承諾しました。
しかし、現実はそう甘くはありません。
膨大な数を限られた予算内で納期日までに納めることは
朝から晩まで油まみれになって働いても働いても
明日の保証の全くない、下請けのまたその下請けの
さらに下請け工場にも似ています。
実は版画専門誌から作品制作依頼がありまして
その数が300部を四点。
つまり、合計1200部こしらえることになってしまいました。
言っちゃなんですが、ワタクシのこしらえる版画は
多くたって限定10部程度、
いつだって1・2枚刷ったらもう飽きちゃうんです。
その現実を考えたら、そりゃもう狂気の沙汰としか思えません。
まるでチャップリンのモダンタイムスのような世界です。
朝から晩まで何も考えずに、ただひたすらに同じ作業の繰り返し。
ワタクシ、このまま続けたら、
きっと労働者階級のヒーローになってしまいます。
だいたいですね、
計算上はひと月もかからないだろうとたかを括っていたのですが
おやつの時間とお昼寝の時間と読書の時間とランチタイムを
計算に入れておくのを忘れました。
頭では朝9時から夕方5時までセッセと働けば楽勝!
と、思っていたのに。
人生そうそう計画通り行くものじゃありません。
こんなに働いたことは未だ嘗てなかろうと言うくらい働いたので、
さてさて、もうソロソロデケタカナ、
と、数えてみれば、ななんとまだ1/3にも達していないではないですか、
あぁ~、やっぱり社長出勤や
お菓子を食べながらの二時間の休憩は問題?
もうイヤ!
正直に言いましょう。
飽きちゃった(泣)
なんてぼやいていたら、
工房に通う優しい生徒が美味しいクッキーとこーしーを届けてくれました。
よ~し、ちょっと休んでお昼寝をしたら、本気だすぞ。
本気!!
中小企業の意地を見せてやろうじゃないか。
町工場には町工場の意地ってものがあるんだ。
この日本を支えているのは俺たちの技術だ!!
あーちすとなんて言う、甘っちょろいプライドは捨て
職人の誇りと意地を見せる時だ。
頑張れ社長!!
社員いないけど。
はぁ~ア。