報道写真やドキュメンタリーでない限り、
被写体は無記名性が良い。
つまるところ、薔薇を撮ってもバラという名前が消える方が良い。
石元泰博の写真展を見て思ったのはそんなことでした。
展示されたすべての写真は桂離宮を撮ったものですが
その名称や場所はほとんど明記されていない。
それで良い。
すべてではないけれど、そのほとんどは
カメラの位置(アングル)が低い。
おそらく、腰あたりだろう。カメラの機能によるのかも知れないが、、。
人が生まれて初めて立ち、歩き始めて見たのと同じような感動が作者にはある。
そこには桂離宮という大まかなカテゴリーはあっても
一つ一つのディテールには名前が消え、
ただ、美しさに対する驚きがあった。
石元泰博写真展は神奈川県立近代美術館・鎌倉で6月10日(日)まで。