名古屋駅でのことです。
予定の乗車時間まで少し時間が空いたので、
時間つぶしにと駅前のビックカメラへ寄る。
目的の無い行動には心に隙ができるのかどうかは知らないけれど、
急に個室に入らなくてはならない緊急事態が発生したのです。
(お昼のエビかつ巻きが多すぎたかな?)
あいてるお部屋を目指し、緊急事態の収拾にかかろうとした瞬間、
目に入ったのがペーパーホルダーの上に誰かのお財布。
(まさか、用を足すのにお札を使う?)
あっ?もしかして悪いやつが悪い方法で手に入れて、
この小部屋で中身だけポケットに入れていったもの?
と、とにかく今は我が身に起こった緊急事態の収拾が先決事項です。
事態を収拾し、落ち着いたところで、
そっと現場に残された物証を捜査官は調べました。
きれいに並んだカード類。
きれいに重ねた現金。(おぉ、盗品ではなく、単なる忘れ物か)
嘘は時々つくけれど、ドロボーにはなりくない私。
身支度を整えて店員さんに渡さなくては。
ただ、このドアを開ける時が問題だ。
もし、ポケットに入れていたら、
近頃、物忘れが激しいおじさんはそのまま新幹線に乗ってしまうかもしれない。
若い頃、画塾の先生に「人の絵を見て盗みなさい。」なんて言われたけれど、
お財布は盗めとは一言も教わっておりません。
手にもってまずその手を見える位置に突き出すようにドアを開けました。
するとそこに待ってましたとばかりに若者がホッとしたような、
泣きそうな顔をして立っておりました。
若者よ、おじさんがいい人で良かったなぁ。
それにしても私のものより財布も中身も立派だったのは、
ちょっぴり気に入らない。
そりゃ感謝されましたよ。
あっごめん、渡した手、まだ洗っていませんでした。