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2013年 06月 22日

版画集「Yokosuka Details」

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作品を作る時に最初に芽生える核となる
言葉にしにくい自分の中にふつふつと湧いて来る得体のしれないきっかけ、欲求。
そして、感情を整理して組み立てるテーマ。
そう言ったものを足がかりに作品は作られて行くのですが
他者からきっかけやテーマを与えられて作品を初めて作りました。
デザイナーには当たり前について来るクライアントの様なものかもしれません。
今、横須賀美術館で行われている「街の記憶」展に展示されている
版画集「Yokosuka Details」はそのようにして完成したものです。
ヨコスカに生まれ、育ったこの土地のことは
外から見たら特殊に見えるのかもしれないけれど、
ワタクシにとっては日常であった事を、
今更ながらに感じさせられた時でした。
子供の頃には庭を挟んだ家では、
アメリカの兵隊さんが毎日のように出入りするのを目にしていたし、
基地に働く隣に住む幼馴染みのお父さんからは
ブラックチェリーソーダや甘すぎるチョコレートを良く頂きました。
アメ車に憧れた年下の友達は中古を手に入れ
仕事中のワタクシをドライブに誘いにやって来ました。
階段の無い国鉄(JR)横須賀駅を降りれば、
目の前の海にはいつだって、軍艦や潜水艦が停泊しているし、
街を歩けばどこにだってアメリカと日本の制服が歩いています。
今でも週末になると工房の上の部屋には
迷彩服を着た若いアメリカ兵がビールをケースで持って上がって行きます。
そんな日常が生まれた時からあるのだから、
あえてじっくり考える事もありませんでした。
版画集「Yokosuka Details」はそんな日常を第三者的な目で
見つめる事から始まりました。
日常が作品という非日常に変換される瞬間を
一市民から、いち作家の目を通して翻訳する事から始めたのです。
たかが12点の版画で街を表すことなど不可能だけれど
全ての風景はディテールで成り立っていることを思い
海と基地とドックの断片を選び取って見たワケです。

横須賀美術館の企画展
「街の記憶」写真と現代美術でたどるヨコスカ
あと、一週間となりました。6月30日までです。
是非とも、多くの方に見ていただければと思います。


横須賀美術館

by fujita-art | 2013-06-22 18:58


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